今回は、サイゼリヤのすごい戦略についてご紹介します。
サイゼリヤと言えば、低価格で美味しいイタリアンが食べられるレストランですが、2022年8月期の決算発表での利益では、同期間でコロナ前を超えているというほどに好調です。
外食チェーンを牽引するサイゼリヤですが、そのサイゼリヤがとっている戦略が凄いと話題なので共有させていただきます。
サイゼリヤのすごい逆張り戦略3選
サイゼリヤといえば、創業者の正垣泰彦会長をはじめ、理系出身者が多く理詰めで意思決定をすることで知られています。
コロナ下において多くの飲食店がタッチパネルでの注文様式を採用する中、サイゼリヤは紙に番号を書いて店員に渡すという超アナログスタイルで対応し、DX推進が叫ばれる世の中で時代を逆行しているようにも見えます。
確かにあの紙オーダーはファミレスの中では独特のスタイルかも。
しかしこれについては真っ当な理由があるとのこと。このあと解説していきます。
今回はそんなサイゼリヤの、時代と逆行していながらも理にかなった面白い戦略を3つ紹介します。
それぞれを解説していきます。
タブレット注文しない
一つ目の逆張り戦略は、「タブレット注文しない」です。
多くの飲食チェーンでは当たり前になりつつあるタブレット注文ですが、サイゼリヤでは紙に書いて店員に渡し店員がテーブルで復唱確認しながら専用端末に入力、そしてその注文が厨房に飛ぶというシステムを2020年7月から採用しています。
私も久しぶりにサイゼリヤに行った際に注文方式が変わっていたのを知って驚いたのを覚えています。
この紙に書いて取る注文方式には
- 注文が決まっていない顧客のオーダー待ち時間が減る
- 対面での接客時間が短縮でき感染防止につながる
- オーダーミスも減らすことができる
といったメリットがあります。
しかし時代は令和。他の外食チェーンではタッチパネルや専用アプリなどでのオーダーが主流となっている中であえてサイゼリヤがアナログの接客を残していることにはもっと深い理由があるのです。
サイゼリヤ元社長、堀さんは言います。※以下引用
当社はすでに成熟期に入っており来店客のほとんどはリピーター。このフェーズ(段階)ではカスタマーインティマシー(顧客親密性)が重要になる。ファストフード店はと違い、サイゼリヤは注文を聞く、料理を運ぶ、皿を片付けるなどを接客スタッフが行うフルサービスのレストラン。接客の部分は省けない。
サイゼリヤ元社長:堀埜一成
どういうことかというと、
現在サイゼリヤは成熟期の段階に位置します。成熟期の段階では市場の拡大が鈍化し売り上げ・利益が頭打ちになるフェーズです。このフェーズの業界トップにいる企業にとってはシェアを維持することが重要であると言われています。
市場の拡大が鈍化している=新規顧客の伸びしろがないということになり、いかに来店頻度、もしくは一人当たりの単価を上げることができるかというような流れになります。
来店頻度を上げる(リピーターを増やす)には、顧客の満足度を高め、企業に対しての好意度を高める必要があります。
性能や価格以外で顧客の心理的な行為度を高めるためには、飲食店の場合、顧客とのコミュニケーションの部分が大切となってきます。
ほかの外食チェーンが非対面型のオーダーを導入しているのならなおさらサイゼリヤでは接客部分を省略することはしないということです。つまりタブレットやタッチパネル式のオーダーを導入しないということになります。
それにより相対的な好意度を上げることができ、来店頻度を増やすことに繋がるのです。
「チェーン店に接客は別に求めていないよ」という声はあるとは思いますが、
求められていないならタブレットでいいかと安易に意思決定しない点がサイゼリヤのすごいところなのです。
また手書き式では、進出している企業の中でオペレーションの効果実験済みであったことからすぐに導入に踏み切れた点も大きいと言われています。
独自路線を貫くサイゼ、かっこええ。
値上げしない
続いての戦略は「値上げをしない」です。
紙オーダーを導入した同じ2020年7月には、全メニューの価格を50円単位に改定しています。
- 299円の「ミラノ風ドリア」→300円 1円値上げ
- 139円の「プチフォッカ」→150円 11円値上げ
さらになんと値上げだけではなく値下げも実施しており、
- 169円の「ライス」→150円 19円値下げ
ほかの外食チェーンではどんどん値上げをしている中、サイゼリヤは値上げと言えるほどの値上げはしていません。
全メニューの価格を50円単位にしたのには、3つの狙いがあります。
つり銭ミスの防止
まずは、端数をなくすことで小銭のやり取りが60%~80%減となったとのこと。これによりつり銭ミスの防止や感染予防につながります。
会計時間の短縮
そして、会計にかかる時間も30%減少していて、来店したグループでまとめて支払うケースも増え、個別会計は25%減少し会計時間の短縮にもつながりました。
客単価の向上
最後は、税込み50円単位の料金設定にしたことで、平均の客単価が上がりました。顧客が料理を注文する際に計算しやすくなったという流れから、何となく複数品を頼んで合計1000円を目安にする人が増加したというのです。従来は700円台前半だった客単価が746円台にアップしました。
サイゼリヤは複数オーダーをしてもらってやっと利益が出るビジネスモデルです。客単価を上げるには複数商品を頼んでもらう必要があります。そこで50円単位にしたことが活きてくるという訳です。
消費者心理として1000円という大台付近を目指したことが客単価向上に繋がりました。
例えば、「ミラノ風ドリアとガーデンサラダで800円か。じゃあプチフォッカも頼んじゃおう。これで1000円ちょうどだ」となるわけです。
この心理、分かる気がする。
また”ほかの外食チェーンが値上げをしている中、サイゼリヤは値段据え置きである”ということは顧客からするとこのように捉えることもできます。
ここ、とても重要です。それは、
”相対的に値下げしている”ということです。
外食チェーン全体が値上げをしていると、値段据え置きのサイゼリヤの需要は増えます。
値上げをしないという戦略も理にかなった戦略なのです。
理系集団、賢い。
キャッシュレスしない
最後の戦略は「キャッシュレスしない」です。
2019年の消費増税に合わせて政府がキャッシュレス還元事業を始めました。
そのとき国内に約1100店舗あるサイゼリヤの約8割が現金決済という、これまた時代と逆行した動きを取っていたのです。
2021年4月には全店キャッシュレス対応になったようですが、そこまでキャッシュレス対応を渋っていたことにも理由があるのです。解説します。
キャッシュレス対応を渋っていた理由は、導入にかかるコストと決済手数料にあります。
サイゼリヤは原価率が高くもともと利幅の少ないモデルなので、ここにキャッシュレスの決済手数料(2~4%)が上乗せされるというのは大変なこととなります。
手数料を賄うには、大幅な顧客増・売り上げ増が必要となります。
さらに国内に約1100店舗あるので導入コスト1100店舗分とバカになりません。
また、コロナ対策で客席数を8割減であったり、営業時間短縮などもあり、顧客数増というのは現実的ではありませんでした。
なのでキャッシュレス対応に力を入れるのではなく、先ほどの紙オーダーや金額改定などをして、業務効率化や客単価向上の施策を優先的に実施しました。
キャッシュレスに関しては、すでに導入した他社やサイゼリヤ一部の店舗を観察してから、バージョンアップされ最適化されたタイミングを見計らってから導入したのです。
後出しじゃんけん的なね。これまた賢いサイゼさん。
おわりに
最後までご覧いただきありがとうございました。
今回はサイゼリヤの逆張り戦略3選について解説しました。
「なんで紙でオーダーを取るのだろう?」と思っていましたがそこには理にかなった深い理由があったことが分かりました。理系集団サイゼリヤ、めちゃくちゃかっこいいです。
時代を逆行しながらも成功を収めるサイゼリヤ。これからもお世話になりたい所存であります。
今回参考にした動画ではさらに深いところで「プロダクトライフサイクル」「価格弾力性」など専門用語が出てきていてより詳しく解説されているので気になる方はぜひこちらもご覧ください。この方の動画はとても分かりやすいと思います。
参考動画
過去にこの方の動画を参考に書いた記事はコチラから
サイゼ最高。ちなみにかねかねが好きなメニュー1位はド定番のミラノ風ドリアです。よく焼きで注文します。ああ食いてえ。
あなたの好きなメニューは何ですか?さあサイゼに行って1000円ぐらい食べてこようか。
ではまた。
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