LINEギフト等で「スターバックスのギフト券」を貰った事やあげたことがある人は多いのではないでしょうか?
貰ったそのギフト、「ちゃんと期限内に使いきっていますか?」
ギクッとしたそこのあなた、今回はせっかくですからこの記事を読んでいってみてください。最後まで読んでいただければ、そのあとはギフト券を使うためにスターバックスに足を運んでいることでしょう。
さっそくですが以下、その内容に迫っていきます。
会社の利益には、退蔵益というものが存在する。
「退蔵益とは商品券などを手にした顧客が、その権利を使わないことで生じる利益のことです。一定期間を経過する、あるいは有効期限を迎えると、今後も使用されないと判断され、発行元企業の営業外収益に計上されます。この額は、企業の有価証券報告書に記載されているケースが多い」
株式会社ファインディールズ代表取締役:村上茂久氏
今回はそんな「退蔵益」というものをテーマとし、その退蔵益で荒稼ぎをしているスターバックスについて解説していきます。
面白いビジネスモデルですし、とても参考になる内容かと思いますので、ぜひ最後まで見ていってください!
プリペイドカードは使い切っても使わなくても会社の利益となるといいます。
ギフト券が生み出す退蔵益
スターバックスのビジネスを紹介する前に、他の企業について紹介していきます。
冒頭に紹介した「退蔵益」を得ている企業の一つに、アイスのギフト券を出している企業「サーティーワンアイスクリーム」があります。
運営元のB-Rサーティーワンアイスクリームの有価証券報告書を確認すると、自社発行のギフト券が退蔵益を生み出していることが分かります。
2023年12月期の「販売済み未使用ギフト券収入」は、3億383万円。経常利益の18億6000万円円のうち16.3%を退蔵益が占めています。さらに前期でも3億2453万円の退蔵益を計上していて、ここから安定的な利益を生んでいることが読み取れます。
実際に有価証券報告書の中で「アイスクリームギフト券の販売を他の記号を巻き込んだ販売形態の一つとして位置づけ、販売を強化した」と述べていることから、戦略的に推し進めているのが見て取れるのです。
また、百貨店業界では高島屋と近鉄百貨店が、有価証券報告書に退蔵益を明記しています。高島屋の場合、対象となるのが、今後も使用見込みがないと判断した「高島屋商品券」であり、2024年2月期の「未回収商品券整理益」の額は15億円。さらに前期は14億2000万円でした。とはいえ、2024年2月期の経常利益492億円に占める割合は3%なので、収益に与えるインパクトはそれほど大きくないといえるでしょう。
一方「近鉄グループ商品券」を発行する近鉄百貨店では、「未請求債務整理益」が退蔵益にあたります。2024年2月期に計上された額は10億8800万円で、2023年2月期は10億4900万円。2024年2月期の38億6400万円の経常利益のうち、退蔵益が28%を占めており、高島屋に比べると、利益への貢献度はかなり高いことが分かりました。
ここまで未使用プリペイドカードや商品券などで数億円から数十億円の利益を得ている企業を紹介してきましたが、世界にはそれ以上の莫大な退蔵益を叩き出す企業も存在するといいます。
それがタイトルにもある、アメリカのスターバックスコーポレーションです。
米国スターバックスの桁違いの退蔵金
スターバックスは多大な退蔵益を計上していると言います。世界中で展開するスターバックスコーヒーは、主力のコーヒーやフラペチーノ以外に、ギフトにも使えるプリペイド式のスターバックスカードやドリンクチケットを販売しています。
これらも他企業と同様に、今後も使用されないと判断されると退蔵益として計上されます。
スターバックスの2023年10月期の退蔵益は2億ドル。1ドル150円換算で、300億円にも上ります。米国系系基準では経常利益の項目がないため、それに最も近い税引き前利益を見てみると、54億ドル(8100億円)を稼いでおり、退蔵益が占める割合は4%弱と微々たるものではあるものの、絶対額としては日本の上場企業の純粋な利益にも匹敵するレベルといいます。
実際、2022年度における上場企業3774社の営業利益の平均額は150億円程度であり、スターバックスコーヒーはこの倍の退蔵益を得ていると言うのです。
スターバックスの退蔵益、規格外すぎる。。
ちなみにですが、米国スターバックスコーヒーの2017年10月期の退蔵益は約1億ドル(150億円)となっており、6年で2倍も増えたことになるといいます。
この要因としては、スターバックスカードなどの販売額が増えていることが挙げられ、こうしたプリペイドカードの販売額は前受収益として計上されます。2017年10月期は13億円(1950億円)であるのに対して、2023年10月期は17億ドル(2550億円)とのことでした。
同社の退蔵益は、スターバックスカードの販売額にある程度比例していることもわかっています。
日本のスタバもうまく稼いでいる話
このような退蔵益ビジネスにおいて、日本のスターバックスコーヒージャパンが扱う「Starbucks eGift」はさらに利益を増やす巧妙なビジネスをしているという話を以下では紹介していきます。
「Starbucks eGift」は、LINEやメール等を通じて相手にスターバックスのドリンクチケットを贈れるサービスのことです。
贈り主は500円、700円、1000円のいずれかの額のチケットを購入し、相手にURLを送信。クリックすると決済可能なQRコードが表示される仕組みとなっています。実際に使ったことがある方も多いのではないでしょうか?こんなかんじのやつです↓
まず、退蔵益に貢献するのが「絶妙な価格設定」にあるといいます。
上記画像にもあるように、スターバックスのLINEギフトには700円の価格帯のものがあり、主流となっています。
この価格設定について以下のように解説がなされていたので紹介します。
「贈り手側の心理として、500円だと安過ぎるし、かといって1000円だと支払うのに若干躊躇する。だからその中間の700円はちょうどいいんです。大半のドリンクメニューとサイズに対応しているため受け取った相手も満足度が高い。
最大のポイントは、多くの人が700円ぴったりで購入しないということでしょう。そもそもスターバックスコーヒーにはその価格のドリンクが少なく、なにより自分のお金ではないので余りが生じてもそれほど気にならない。超過分を支払えば700円を超えたドリンクも注文できますが、割合としては多くないと推測します。つまり、使い切らない可能性がとても高いのです」
株式会社ファインディールズ代表取締役:村上茂久氏
700円と言う価格設定が絶妙で、贈る側の心理的にも受け取った相手の満足度的にも最適なところにあるといいます。さらにポイントとして、多くの人が700円ピッタリでは購入しないことを挙げ、そもそもとして自分のお金でないという点から使い切らないケースも多いと考えられるのです。
そしてこの残高を確実に退蔵益へとつなげるために欠かせないのが「2つの縛り」になります。
退蔵益を確実に得る仕組みがすごい
退蔵益を確実に得る仕組みとして「2つの縛り」が挙げられます。
まず一つ目は、チケット1枚につき1ドリンクしか購入できないというルールです。次回の会計時に残りの額と現金を組み合わせて決済することはできません。
そして二つ目は、有効期限の存在です。無期限で利用可能なスターバックスカードと異なり、eGiftは購入から4か月後までに使用する必要があります。この期限を超えた分は必ず退蔵益として回収できるという訳です。(なお、本国アメリカにもeGiftはあるが有効期限は設けられていない)
一般的に退蔵益は「今後も使用される可能性が低い」と判断された商品券なども含まれます。これは、あくまでも可能性の話なので当然使われることもあります。しかしその点、有効期限を設けることさえすれば、失効分が確実に利益として、退蔵益に計上されます。
消費者側の目線から見れば、単に「やべ、使用期限切れちゃったか」程度ですが、発行元の企業にとっては実に都合がいい事なのです。
退蔵益ビジネス、おもしろすぎる。。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。今回はスターバックスのプリペイドカードを用いたビジネスモデル、「退蔵益」について解説してきました。
スターバックスのLINEギフトや、他企業の商品券等は、私たちの生活にもなじみのあるモノでしたが、それが企業側の目線に立って「ビジネス」の観点から見るといろいろな学びがあってとても面白かったです。
ビジネスの世界では、生き残りをかけた様々な稼ぎ方が存在します。
消費者側として言えることは、ギフト券を貰った際はせっかくなので、使用期限があるモノは特に使い切ることを意識しましょう、ということとかなと思います。
でもまあ、企業にとっては使ってくれても使わなくてもどちらにせよ「利益」になるというところがミソなんだよな。ぐぬぬ。
日本のスタバ賢いな。コーヒー飲みたくなってきた。
ではまた。
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