ビジネスの世界では、強固なブランド力と圧倒的なシェアを持つ「巨人」に新興企業が挑む構図がよく見られます。そしてその挑戦が成功したとき、私たちは新たなビジネスのヒントや投資の機会を見出すことができると思います。
今回取り上げるのは、完全ワイヤレスイヤホン(TWS)市場です。長らくAppleのAirPodsシリーズが絶対的な王者として君臨していましたが、2025年8月にこの市場に大きな地殻変動が起きました。
なんと、充電器やモバイルバッテリーでおなじみのAnkerがAppleを抜き去り販売数量シェアで首位を獲得したのです。これは2016年12月の初代AirPods登場以来、8年以上にわたるAppleの支配を打ち破る快挙でありビジネス戦略の観点からとても興味深い事例だと思います。
なぜAnkerは圧倒的なシェアを持つAppleを上回ることができたのでしょうか?今回はAnkerの企業戦略を深堀し、そこから得られるビジネスや投資へのヒントを探っていきます。

TWS市場におけるAppleの優位性とAnkerの台頭
Appleは強力なブランド力、優れた製品デザイン、そしてiPhoneを中心とした商品の連携により、TWS市場(ワイヤレスイヤホンなどを扱う市場)で圧倒的な優位性を築いてきました。
しかしAnkerは着実にシェアを拡大し、2024年1月には初めてシェア10%を超え、2025年5月にはソニーを上回り2位に浮上。そして2025年6月にはAppleを逆転して初の首位を獲得し、8月には過去最高の18.9%で再び首位に返り咲きました。
このAnkerの成長には、単なる価格競争だけではない緻密な戦略があるのです。
Ankerの成功を支えた3つの戦略

AnkerがAppleを超えた背景には、以下の3つの戦略が大きく貢献しています。
ニッチ市場の開拓と「賢い消費」層の獲得
Appleが3万円前後のハイエンド帯に注力する一方で、Ankerは1万円前後のミドルレンジ帯を主戦場としました。これは、高価な製品には手が出しにくいが、品質にはこだわりたいという「賢い消費」層のニーズを的確に捉えたニッチ戦略です。
この価格帯で高品質な製品を提供することで、Ankerは幅広いユーザー層を獲得しました。
既存技術の巧みな転用と製品への応用
Ankerは、モバイルバッテリー市場で培った急速充電技術や長時間再生可能なバッテリー技術をTWS製品に応用しました。これは既存の強みを異なる製品カテゴリに転用する優れた戦略といえます。
ユーザーがTWSに求める「バッテリー持ちの良さ」や「充電の手軽さ」といった実用的なニーズにこたえることで、製品の差別化に成功しました。
豊富な製品ラインナップと多角的なアプローチ
2025年8月のシリーズ別販売数量シェアTOP10には、Ankerの「Soundcore P40i」「Soundcore P30i」「Soundcore Liberty5」の3製品がランクインしています。さらにトップ30には計7製品がランクインしており、これは全メーカーの中で最多となります。
Ankerは、単一の製品に依存するのではなく多様な価格帯と機能を持つ製品を幅広く展開することで、様々なユーザーの細かいニーズに対応し、市場全体での存在感を高めました。
AppleとAnkerの戦略比較:ビジネスモデルの視点から

AppleとAnkerの戦略を比較することで、異なるビジネスモデルの成功要因が見えてきます。
Appleは「最高の体験」を提供することで高価格帯を維持し、顧客を囲い込む戦略です。一方Ankerは、手ごろな価格で「十分な品質と実用性」を提供し、多様な製品で市場の隙間を埋めていく戦略といえます。
投資の観点からは、Appleのような成熟した巨大企業の安定性と、Ankerのような成長企業の市場拡大の可能性、どちらに魅力を感じるかで判断が分かれるでしょう。
ビジネスパーソン・投資家への教訓
Ankerの事例から、私たちは以下のビジネスのヒントを得ることができます。
- 巨人の隙間を狙う:圧倒的なリーダーがいる市場でも、そのリーダーがカバーしきれていないニッチな領域や価格帯にチャンスは潜んでいます。
- 既存技術の水平展開:自社の強みとなる技術やノウハウを、異なる市場や製品に応用することで新たな価値を創造できます。
- 顧客ニーズへの徹底的な対応:ユーザーが本当に求めているものは何か深く理解し、それに応える製品開発を行うことが、市場での成功に繋がります。
- 成長企業への投資機会:既存の市場構造を打破する可能性を秘めた企業は、長期的な視点で見れば魅力的な投資対象となりえます。
変化する市場とAnkerの未来
AnkerがAppleを逆転したことは、TWS市場だけでなくテクノロジー業界全体の競争環境が変化していることを示唆しています。ブランド力だけでなく、コストパフォーマンス、実用性、そして顧客ニーズへの対応力が、今後の市場を制するカギとなるでしょう。
ビジネスパーソンとしては、常に市場の変化に目を向け、新たな機会を見出す洞察力を養うことが重要です。また、投資家としては、Ankerのような成長企業の戦略を分析し、その潜在能力を見極める力が求められます。
Ankerの今後の動向、そしてTWS市場のさらなる進化にも注目していきましょう!

AppleとAnkerの株価チャートを見てみる
AppleとAnkerの株価チャートを最後に見てみましょう。
まずはAppleから。

Googleファイナンスから5年チャートです。見てわかるようにさすがの大企業、右肩上がりで成長をし続けています。
続いてAnker。

Ankerは中国市場で上場しています。2023年ごろまで下落基調、その後大きく反転、今現在も上昇を続けているといった動きです。
時価総額などの規模はAppleと比べ物にならないですが、Ankerの今後の成長に期待してみるのも一つの案かもしれません。
我が家のAnker製品の紹介
今回このような記事を取り上げるきっかけとしては、そもそも私自身がAnker製品をいくつか持っていて関心があったからという理由があります。
現在保有しているAnker製品を紹介して、本記事は終わりたいと思います。
Soundcore Liberty 5

まずは、Soundcore Liberty 5。現在使用しているワイヤレスイヤホンです。
ガジェット系ユーチューバー等がおすすめしていてコスパがよいというので購入しました。音質やらにそこまでこだわりはないので、十分に満足のいく商品に感じています。
Anker Nano Charger (20W)

続いては、Anker Nano Charger (20W)。現在使用しているスマートフォンの充電器です。
タイプCの充電タイプで、小さいのに急速充電ができるのが強みの商品です。
Anker PowerCore 10000

続いては、Anker PowerCore 10000。こちらはモバイルバッテリーになります。
スマホの充電の持ちが悪くなってきたときに購入し、旅行中などに活躍してくれています。が、調べてみたらこの型番の商品は生産終了とのこと。今はより良いモバイルバッテリーが発売されているみたいです。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は、Ankerがアップルを逆転、完全ワイヤレスイヤホン市場から学ぶビジネスのヒント、について解説してきました。
Anker製品を使用している身としてはとても興味深い記事でしたので、取り上げてみました。Appleが最強なのには間違いありませんが、それに追随する企業が出てきてくれるというのはうれしいことかなと思います。
Anker製品、コスパがよくて品質も悪くない。見た目もスタイリッシュ。本記事でも少し書きましたが「賢い消費」層にはうまく刺さっているなと改めて感じました。
街中で見かけるAnkerの専門店もついついフラっとはいってしまうんだよなぁ。あとAnkerの株でもあれば買ってみたいと思ったのですが、中国市場で上場とのことで買えておらず。
Anker製品を安価ーに。
ではまた。
コメント