先日大阪万博に行ってきました。その中で「TECH WORLD」という企業型のパビリオンがありました。前情報として台湾のパビリオンだということは聞いていましたが、建物には「台湾」の文字はなく「TECH WORLD」のロゴがあるのみ。
今回は、そんな不思議な存在である「TECH WORLD」を実際に訪れて感じたこと、そして”なぜ台湾は国名を出さずに出展しているのか”という背景をまとめます。
台湾が「国として」出展できない理由
大阪万博に参加する国々の多くは、博覧会国際事務局(BIE)の加盟国になります。
しかし台湾はBIEに加盟していないため、「国家パビリオン」としての正式出展ができません。
そしてもう一つの背景には「中国の政策」があります。
中国が国際社会に”台湾を国家として扱わないように”求めているため、主催国の日本も外交的バランス取らざるを得ない状況にあります。
そのため台湾は「民間企業による出展」=企業型パビリオンという形を選択しました。
出展主体は「玉山デジタルテック」で、台湾貿易センター(TAITRA)が深く関与しており、実質的には台湾を代表する展示となっています。
「TECH WORLD」という名前に込められた意味
「Taiwan Pavilion」ではなく「TECH WORLD」という名前にしたのにはいくつかの理由があります。
- 国名を出すと外交摩擦を生むため、抽象的な名称にした
- ”TECH WORLD”の略称「TW」は実は”TaiWan”の頭文字でもある
- 「技術と自然の調和」という万博テーマに沿ったブランド設計
つまり表向きは”グローバル企業パビリオン”の顔をしながら、中身ではしっかりと”台湾の技術力と感性”を発信しています。
TECH WORLDに協賛している企業たち
TECH WORLDの出展には以下のような台湾企業が協力しているとのこと。
- ASUS(エイスース):展示技術協力
- AUO(友達光電):大型ディスプレイの映像演出
- Hiwin Technologies(上銀科技):精密制御技術の提供
- 玉山デジタルテック(Tamayama Degital Tech):運営主体
- 台湾貿易センター(TAITRA):企画・支援
なお、個人的興味で調べてみたのですが台湾を象徴する企業である”TSMC”(台湾積体電路製造)は協賛リストには入っていませんでした。直接的な関係はなかったようです。
実際にTECH WORLDに行ってみた感想
ここからは実際にTECH WORLDに行ってみた感想を紹介します。
外観
まず外観ですが、白くうねるような山のような見た目をしていました。

正面には「TECH WORLD」というロゴが。やはり”台湾”の文字はどこにもありませんでした。
リストバンドの装着
中に入るとエントランスのようなところで係の方からスマートウォッチのようなリストバンドを渡されます。どうやらこの装置で中の展示を見ている間の感情の動きをデータ化してくれるようです。

早速テクノロージー感を感じられてワクワクしました。
展示内容
展示内容のテーマは「自然とテクノロジーの融合」。
館内は3つのゾーンで構成されていて、最初が大量のタブレットと360°スクリーンの映像、そして霧や風、香りを使った演出で”五感を感じる”映像。最後が実際の半導体の展示と台湾の描く未来の映像美でした。
全体的に映像が主体ではありましたが、台湾の技術をこれでもかというぐらいに展示してくれていて圧倒的な映像美でした。

こちらは一つ目の展示。円柱型のスクリーンに映像が映し出され、下にある大量のタブレットが印象的でした。

実際にタブレットを触れる場面もありました。(タブレットにいる蝶を上にスワイプして大画面に飛ばしてみましょう的な)

続いてエレベーターで上のフロアに移動し、大画面での台湾の自然を感じられる映像を見ました。
巨大スクリーンで見る台湾の山々や大自然の映像はとても美しかったです。

スクリーンの下からは霧のような演出が。それに加え館内には自然の香り?がしてまさに”五感で感じられる体験”でした。

その自然を感じられる香りの正体が、台湾を代表するお花「胡蝶蘭」の香りでした。
台湾の胡蝶蘭は、品質と品種の多様性が高く評価されていて、日本で流通する胡蝶蘭の大半を占めているそうです。色とりどりの蘭が並んでいてとてもきれいでした。いい香りもして素敵な空間でした。

EXPO2025の文字が印字されていた胡蝶蘭。

続いてはデジタルアートの展示。昔の絵画などが「動く絵」に進化し綺麗な映像と化したアートでした。


実際に目の当たりにすると圧倒的な映像美でした。

続いてはICチップなどの実物の展示。

自動車用やスマートフォンなど、実際に使われているICチップの展示がされていました。私たちの生活の周りにはたくさんのICチップが使われているのだなと実感できる展示でした。
フューチャー「未来」:未来のより良い暮らしは、テクノロジーの上に築かれる。ICチップはその心臓部であり、TECH WORLD独自の半導体産業クラスターが、社会と社会をつなぎ、チップとともによりよい未来を創り出す。
TECH WORLD館内ポップに記載

そして最後は巨大スクリーンで台湾の描く未来についての映像を見て終わりました。


ちょうどど真ん中で見ることができて、映像に引き込まれるようでした。「こんな未来に本当になるのかな」そんな風にとてもワクワクしました。未来を考える時間はとても楽しい。

そして出口では、最初につけたリストバンドから計測された「最も心ときめいた瞬間」が掲示されていました。ネイチャー(自然)に最も心ときめいていたそうです。体験型の展示をここで感じられてよかったなと思いました。

最後には来場者特典として、なんとこのトートバックが無料でもらえちゃいました!つくりもしっかりしてて日常でも使えそうです〇
混雑具合と雰囲気
9月終わりの金曜日に行きましたが、私たちは2時間近く並びました。ネットで調べてみると混雑時には5時間弱並ぶといった書き込みも見たので、妥当の待ち時間かなと思いました。
結構待つとはいえ、ちょっとずつ進みはするのでそこまでの苦痛ではありませんでした。外にいるスタッフさんの雰囲気もとてもよく、日本語堪能ですごいなと思いました。
中の展示についてですが、圧倒的な映像美を体感させられたなといった感じでした。個人的には関心があったので楽しかったですが、テクノロジーにそこまで興味がない人にとっては「?」な時間に感じるかもしれません。強いて言うのなら現代のテクノロジー技術を実際の製品なんかで体験できたりしたらもっと楽しいだろうなとは思いました。ですが万博全体の展示が”自分で感じる”がテーマな感じなので台湾のパビリオンも十分に見ごたえはあるのかなとも思いました。
個人的には並んでも見る価値はあったと思います。
TECH WORLDが伝える台湾のメッセージ
国名を出せないという制約の中で、それでも自分たちの文化・技術・精神を表現しようとする姿勢に台湾の方たちからの強いメッセージを感じました。
外交上の制約を創造力で乗り越えようとする姿は、まさに「未来社会の実験場」という万博テーマにふさわしいのではないでしょうか。
国家パビリオン以上の存在感を放っていたとも思えます。
まとめ

今回は、台湾が国名なしでパビリオンを出展している理由と実際にTECH WORLDに行ってみた感想について書いてきました。最後までお読みいただきありがとうございました。
台湾はBIEに非加盟、そして外交事情により国として出展できないため、TECH WORLDという名前で出展しているのだということが分かりました。
中の展示は五感で感じられる圧倒的な映像美が印象的でした。
名前はTECH WORLDでも、中身はまぎれもなく「台湾」。国からのメッセージを強く感じることができました。
台湾の半導体で私たちの生活は支えられているといっても過言ではありません。台湾は自然も豊かです。そんな台湾を見守っていきたい、そう思いました。現地にも行ってみたいな。台湾グルメもうまいし。
ルーローハン食べたい。
ではまた。
大阪万博全体を紹介した記事も書いていますので、よかったら併せてお読みください↓
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