フィンランドの教育は素晴らしい。
こんな話をどこかで聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。今回はそんな
”フィンランドの教育”について、記事を書いていきます。
この記事の結論は、「フィンランドの教育は世界一素晴らしいものではなく実は失敗であった」です。
一体どういうことなのか、詳しく解説していきますのでぜひ最後まで見ていってください。
フィンランド教育は話題になった経緯
「フィンランド」と検索すると必ず出てくる言葉があります。それは「教育」です。
フィンランドが教育先進国である、という話はどこかで聞いたことがある人が多数ではないでしょうか。
フィンランドの教育が注目されたきっかけは、20年前ほど前に行われた全世界規模の学力調査でした。フィンランドはこの調査の3科目で1位2位1位という輝かしい結果をたたき出したのです。
しかも世界中の教育関係者を驚かせたのは、意外な教育方法にありました。フィンランドは勉強量をあえて減らすことで学力を向上させたのです。
この結果から日本でもフィンランド教育は注目を集めました。詰め込み教育を行ってきた日本とは真逆の方法のフィンランド教育の方が優れているという結果が出たからです。
このフィンランド教育の印象が受け継がれて今日に至るわけですが、近年のフィンランドではこれを否定するような声が出始めているというのです。
フィンランドの止まらない学力の転落に広がる波紋
フィンランドの教育は学力向上に失敗している
もはやEUとOECDにも勝てないフィンランド教育
フィンランド教育は風前の灯、カナダも注目を
出典:社曾部部長
フィンランド教育に一体何が起こったのでしょうか。
先ほどの国際学力調査のその後を振り返ってみると、そこには目を疑うような結果が待っていたというのです。それがこちらになります。
読解力では、しばらく好成績を維持するも2018年から急速に低下しています。
学力でも同じ流れで落ちています。
さらに最も顕著なのが数学で、2022年にはなんと20位まで転落してしまったのです。
これは点数で見るとさらに深刻なことが分かり、3科目すべてで継続的に点数が落ちているのみならず、その早さは平均よりも早いことが浮き彫りになっています。
では一体なぜフィンランドの学力はここまで下がってしまったのでしょうか。世界一とたたえられた教育制度はなぜここまで衰退してしまったのでしょうか。
以下では、日本ではほとんど取り上げられない、フィンランド教育への批判的な見方、そして日本の詰め込み教育の意義をいま一度考え直していきます。
フィンランド教育は失敗だったのか?
ことの発端は、2000年。OECDが初めて実施した全世界の15歳を対象にした学力調査で、フィンランドが全ての科目で4位以上、読解力では1位という輝かしい成績を上げたときでした。
この調査結果が公開されるまでフィンランド教育は無名の存在でした。北欧の小さな国が教育先進国であることを誰も知らなかったのです。ましてはフィンランド人でさえもまさか自分たちの教育がここまで優れているとは思っていなかったそうです。
しかしこの調査をきっかけにフィンランド教育は一気に世界の注目の的となりました。そしてその秘伝の教育法を探るべく世界中の教育関係者がフィンランドに詰めかけたのでした。
フィンランド教育がここまで注目された理由は、その心配してしまうほどの思い切った”ゆとり”にありました。
宿題がない、あっても1日10分だけ。
月曜に3時間、火曜は4時間。週に20時間の学習時間。
出典:社曾部部長
フィンランドのあえて勉強量を減らすやり方は他の国の教育関係者にとって大きな衝撃でした。
それまでは勉強すればするほど学力は上がるというのが常識で学生が猛勉強する東アジア諸国ではそうして高い学力を維持してきました。
欧米でも学力を上げるために学生にもっと勉強をさせるべきとの声はありましたがそれは否定もされていました。なぜなら子供を机に張り付かせて勉強を強制するというのは欧米の個人の自由と主体性を重んじる価値観とは異なっていたからです。
学力が高いに越したことはありませんが、欧米は東アジアとは違う方法を取りたいという葛藤にさいなまれていました。そこに救世主のように現れたのがフィンランドでした。フィンランドはまさに勉強量を下げることで学力を向上させるという欧米の理想通りの方法で成功を収めたからです。
さらにフィンランドは東アジアからもおなじくらい注目を集めました。なぜなら勉強をしていないフィンランド人が勉強している自分たちよりも学力が高いとなれば、自分たちが必死にしている猛勉強には意味がないことになるからです。
受験戦争に苦しめられた世代はフィンランド教育に強いあこがれを持ちました。フィンランド人は自分たちがやってきた受験も暗記も宿題もしないで、高い学力を得ているのだから日本人ももう詰め込み教育をやめてもいいのではないか、と考えたのです。
フィンランド教育はこうして日本の”ゆとり教育”を後押ししました。
しかしフィンランド教育の成功の秘訣と盛んに謳われてきたこの革新的なゆとり教育は実際のところ、本当に学力を向上させているという確固たる根拠はありません。
実際にフィンランド国立経済研究所のある研究者は、「フィンランドのPISAの結果を支えるとされる要因には、強い根拠がない。」と発言しています。
フィンランド教育の成功を疑うべき理由
フィンランド教育の成功法を疑うべき理由は2つあるといいます。
1つ目は、教育は因果関係がつかみづらいという理由です。
学力には、教育法だけではなく経済や治安、家庭環境、健康状態、文化、遺伝など無数の要素が複雑に影響します。
よく東大生の親が子どもを東大に入れた教育法を伝授する本が人気を博しますが、実際のところ東大生の親全員が共通して実践する教育法というのは存在せず、結局共通しているのは両親ともに高学歴で家庭環境が良好、健康で治安のよい地域に住む裕福な家庭という、教育法とは関係のない部分だったりします。
したがってフィンランドの学力が高い理由も、その教育法にあるとは断言できないのです。
特にフィンランドはかなり豊かで安全な国なので学力は単にそれを反映しているだけかもしれません。
そして2つ目は、教育改革には効果が出るまでに時間がかかることです。
政府が新しい教育法を導入するよう全国の学校に通達しても現場がそれに適用するには時間がかかります。
例えば授業内に討論を取り入れるにしても、まずは先生が研修を受け授業の年間予定を作り直し、それになれるまでに数年以上を要します。また新しい教育法をはじめから取り入れない先生もいて、その人が退職するまで何十年と古い教育法が残ります。
これはフィンランド教育を見る上で重要な側面であり、フィンランドが2000年に学力で世界1位になったからといって、それがその時点の教育法のおかげとは限らないのです。
確かに「試験も宿題もなくしたら学力が上がった」というのは面白い話ではありますが、この成果は実はもっと昔の古い教育のおかげかもしれないのです。
これを踏まえてフィンランド教育の時系列をもう一度よく見ていきましょう。
フィンランド教育の歴史から紐解く
フィンランド教育は元々集団主義的で、中央集権型のどちらかといえば東アジアに近いような体制でした。そこから90年前後に宿題削減、試験削減、教科書検定の廃止、個性の重視などの改革が行われ、より個人主義的で地方分散型の方向に舵がきられました。
そしてフィンランドの成績が最高に達したのが2000年代前半それから成績は下降の一途をたどりました。2000年にPISAを受けた15歳が小学校に入ったのは1992年です。この時点で改革が現場に浸透していたかは疑わしく、この世代はおおむね改革前の教育法の下で学んだと思われます。
そして成績が一気に下がった2009年の世代が小学校に入ったのは2001年、これは改革から10年経って新しい教育法が浸透したと思われる時期と重なります。さらに改革な影響を確実に受けたもっと後の世代の学力は急激に下がっています。
つまり2000年代初頭の高い学力は旧来の教育法によるものであり90年代の改革は学力を上げたどころか学力を下げた原因である可能性が高いのです。
2000年まで続いた学力の安定的な上昇をけん引したのは80年代前半まで行ってきた集団主義的で中央集権的な制度、質の良い公立学校を増やして全て無料にするといった地道な改善策、そして教師主導型学習でした。
しかし1990年前後からは全てが逆の方向に転換され個人主義、地方分権、生徒主導型学習を取り入れた10年以上の時を経て学力低下を引き起こしたのです。
フィンランド教育は2000年代初頭に世界中で絶賛され学力低下を知らない人々からは未だ称賛されていますが、結局のところ本当に称賛するべきだったのは改革前のある意味古臭い教育方法だったのです。
日本と東アジア諸国の学力がおおむね一貫して高くあり続けたのはこの古臭い教育を捨てなかったかもしれません。日本は2000年の時点で3科目が8位・1位・2位、2022年でも3位・5位・2位と変わらず良好です。
しかも首位にいるのはシンガポール、マカオ、香港といった大都市ばかりなのに対し日本は20倍大きな人口を抱え、学力が低くなりがちな田舎も含んでおきながらのこの好成績です。
日本の古臭い教育、詰め込み教育も決して批判するものではないのかもしれません。
おわりに
最後までお読みいただきありがとうございました。今回は、フィンランド教育の現状、そして日本の教育にも触れて解説をしてきました。
私自身、この情報を目にするまではまさにフィンランドは教育の先進国であり、自由な教育が学力の向上に役立っているものだと認識していました。それと同時に日本の古臭い教育にも「なんで変わらないのだ!」と思っていたくらいでした。
しかし今回の実際の現状を目の当たりにして、教育方法というものも安直に変えればいいものでもないのだなと思いました。
古くから試され、実行されてきた古臭いと思われる教育でも実際に学力向上が伴っているのだなということが分かりました。
どちらかの教育法に思いっきり舵を切ればよいわけではなく、何事にも言えることですが”バランス”が大事なのかなと思いました。子どもの意見を尊重して考えされるような自由さも大事である一方、日本のような集団に属することを学ぶ古臭い教育法も受け継いでいき、良い所を混ぜながら教育法を確立していくことが大事だなと思いました。
私自身が教育業界に直接かかわるわけではないですが、こういった事実、現状を知っておくことで少しでも実生活に役立てたり、周りに影響を与えられたらなと思います。
フィンランド教育、子どもからしたら最高の形ではあったな、、。自由は良いように見えて案外奥が深い。
ではまた。
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