生成AIといえば、ChatGPTや画像生成AIのように、パソコンやスマートフォンの中で使うものという印象が強いかなと思います。
一方で、これからAIが向かう先として注目されているのが「フィジカルAI」です。
最近、楽待の動画「【フィジカルAI】日本株に5年で追い風が吹く/『世界トップ3』が日本企業!?」を見ました。
動画では、フィジカルAIを「産業のDX」と捉える視点や、住宅にAIとロボットを組み込む構想、日本企業が持つ可能性についてが語られていました。
生成AIでは米国企業の存在感が圧倒的でしたが、AIが実際に物を動かす段階になると、ロボットや精密部品、センサー、製造現場を持つ日本企業にも勝負できる場所がありそうだと言うのです。
今回は動画の内容をもとに、フィジカルAIとは何なのか、日本企業にどのような強みがあるのか、投資先としてどんな日本株が考えられるかを整理していきます。
フィジカルAIとは何か

フィジカルAIは、現実世界の状況を認識し、判断し、ロボットや機械を通じて実際に行動するAIです。
これまでの産業用ロボットは、決められた場所で、あらかじめ設定された動作を正確に繰り返すことを得意としていました。一方、フィジカルAIを搭載したロボットは、カメラやセンサーから周囲の状況を読み取り、その場に応じて動作を変えることを目指します。
人に例えるなら、センサーが「目や耳」、AIが「脳」、ロボットや機械が「身体」です。
従来の生成AIが文章や画像を作るAIだとすれば、フィジカルAIは、その判断を現実世界の動きにつなげるAIと考えると分かりやすいと思います。
たとえば、次のような用途が考えられます。
- 工場で形や位置の異なる部品をつかみ、組み立てる
- 倉庫内の荷物を判別し、運搬する
- 建設機械が現場の状況に合わせて動く
- 家庭内で洗濯物や食器を片付ける
- 人や障害物を認識しながら安全に移動する
つまり、フィジカルAIはロボットだけの話ではありません。工場、物流、建設、介護、医療、住宅など、現実世界で行われている多くの仕事に関係する可能性があります。
動画を見て特に興味深かった3つのこと
AIの主戦場が、画面の中から現実世界へ広がる
生成AIは、文章や画像、プログラムなどのデジタルデータを扱うことが中心でした。
しかしフィジカルAIでは、現実の空間には形の違うもの、予想外の障害物、人の動きなどが存在します。つまりAIの主戦場が、デジタルから現実の世界へと変わっていくと言えます。
同じ作業を繰り返す自動化から、状況を見て考える自動化へ。動画の中で語られていた「産業のDX」という表現が、とても分かりやすく感じました。
日本には「身体」を作る企業がそろっている
AIの基盤モデルや半導体では、NVIDIAをはじめとする米国企業が先行しています。
一方、AIが現実世界で動くためには、ロボット本体、モーター、減速機、直動部品、センサー、制御機器などが欠かせません。さらに、実際にロボットを導入し、改善を繰り返す製造現場も必要です。
日本には、こうした「身体」と「現場」に関わる企業が幅広く存在しています。
ここでいう「身体」とは、ロボット本体やモーター、減速機、センサーなど、AIの判断を現実の動きに変える機械や部品のことです。
日本企業だけですべてを作るというより、海外のAIや半導体と、日本企業のロボット・部品・現場力を組み合わせる形が現実的なのかもしれません。
住宅そのものをロボットに合わせて作る発想
動画内では、MWを創業した成田修造さんが、AIとロボットを組み込んだ住宅について話していました。
個別の家電をスマートフォンや音声で操作する従来のスマートホームとは違い、住宅全体を一つのシステムとして考え、天井レールを移動するロボットアームなどで家事を支援する構想です。
人型ロボットをそのまま家に入れるのでなく、ロボットが働きやすいように住宅側も変える。この考え方はとても面白いと思いました。
家庭、工場、倉庫、建設現場など、それぞれの空間に合わせてAIと機械を一体設計することが、フィジカルAI普及の一つの鍵になりそうです。
なぜフィジカルAIが日本株の追い風になり得るのか

フィジカルAIの価値は、AIモデルだけでは完成しません。
実際に動くロボット、それを支える部品、周囲を認識するセンサー、通信・計算基盤、そして導入先となる現場が必要です。
この流れを投資の視点で分類すると、次の4つになります。
| 分類 | 主な役割 | 今回取り上げる企業 |
|---|---|---|
| ロボット・制御 | AIの判断を実際の動作に変える | ファナック、安川電機、川崎重工業 |
| AI・通信基盤 | 学習用計算資源、通信、ロボット経済圏 | ソフトバンクグループ、ソフトバンク |
| 精密部品・センサー | 関節、直線運動、認識を支える | ナブテスコ、ハーモニック・ドライブ・システムズ、THK、キーエンス |
| 導入・活用 | 建設・鉱山など実際の現場で使う | コマツ、日立建機 |
ただし、「フィジカルAI関連」というだけで、その会社の利益がすぐに増えるわけではありません。
実証実験から量産、導入、利益への反映までには時間がかかります。各社の売上全体に占めるフィジカルAIの割合も異なるため、テーマごとに分けてみる必要があります。
フィジカルAI関連で注目したい日本株11社
11社のうち、フィジカルAIとの距離が比較的近いと考える主要5社については、TradingViewで作成した日足チャートを掲載します。
チャートはすべて「日足・表示期間1年・ローソク足・出来高」の条件にそろえて表示します。
※画像は記事作成時点のものなので、最新の値動きは画像下のリンクから確認できます。
ファナック(6954)
産業用ロボットやFA、CNCを手掛ける、フィジカルAIの中心に近い企業です。

ファナックはNVIDIAとの連携を強化し、仮想空間でのシミュレーションと実機の動作をつなぎ、強化学習や模倣学習を活用したロボット開発を進めています。フィジカルAIが工場へ普及した場合、ロボット本体だけでなく、制御やシミュレーションまで含めて恩恵を受ける可能性があります。
一方で、業績は世界の設備投資や自動車・中国市場の動向に左右されやすいため、成長テーマだけではなく受注の回復も確認したいところです。
安川電機(6506)
産業用ロボット「MOTOMAN」と、サーボモーターやインバーターなどのモーション制御に強みを持ちます。

AIロボット「MOTOMAN NEXT」は、画像認識や力覚、経路計画などを組み合わせ、状況に応じた自立作業を目指しています。ソフトバンクとはAI-RANやGPUクラウドを活用したフィジカルAIの実証も進めています。
ロボットの「頭脳」と「動き」をつなぐ位置にあり、フィジカルAIとの距離が近い企業の一つだと考えています。
川崎重工業(7012)
防衛、航空宇宙、エネルギー、二輪車など幅広い事業を持つ一方、日本の産業用ロボット開発を早くから手掛けてきた企業でもあります。

2026年には米国サンノゼにフィジカルAIの開発拠点を設け、NVIDIA、Microsoft、富士通などとの協業を進めています。製造や医療、造船など、自社が持つ幅広い現場へ技術を展開できる点が特徴です。
ただし、株価は防衛や航空宇宙など別の材料でも大きく動くため、フィジカルAIだけで評価する銘柄ではありません。
日本株の取引環境を整えたい方へ
ここまで、フィジカルAIとの関わりが比較的深い日本企業を紹介してきました。 実際に投資を検討する場合は、企業の事業内容や業績を確認したうえで、 手数料や取扱商品、ツールの使いやすさなどから、 自分に合った証券会社を選ぶことが大切です。 松井証券のサービス内容は、以下の公式ページから確認できます。
※投資には元本割れのリスクがあります。口座開設や取引の前に、 サービス内容、手数料、取引条件などの最新情報を公式サイトでご確認ください。
ソフトバンクグループ(9984)
AI半導体、計算基盤、投資先企業などを通じて、AI産業全体へ大きく投資する企業です。
TradingViewでソフトバンクグループの最新チャートを見る
ソフトバンクグループは、ABBのロボティクス事業を取得する契約を発表しており、2026年半ばから後半の完了を見込んでいます。ただし、規制当局の承認などを条件とするため、記事執筆次点では取得完了とは断定できません。
取引が完了すれば、AIと産業用ロボットを結びつける大きな足場になります。一方で、投資会社としての性格が強く、保有資産の評価や資金調達、市場環境によって株価が大きく動く点には注意が必要です。
ソフトバンク(9434)
携帯通信会社のイメージが強いですが、フィジカルAIを支える通信と計算基盤の側から参入しています。
安川電機とは、AI-RANやAIデータセンターのGPUクラウドを使い、ロボットの学習・評価・実機適用を効率化する取り組みを進めています。
ロボット本体を作る企業ではなく、多数のロボットとAIをつなぐインフラ側の候補です。ソフトバンクグループ(9984)とは別の上場会社なので、投資的には混同しないようにしたいところです。
ナブテスコ(6268)
産業用ロボットの関節に使われる精密減速機を手掛けています。

同社の精機カンパニーは、産業用ロボットの関節用途における精密減速機で、世界シェア約60%と説明しています。ロボットの台数が増えれば、その内部に使われる重要部品の需要も増えるという「部品側」からの注目銘柄です。
ロボット需要の増減が業績へ比較的伝わりやすい一方、中国メーカーとの競争や設備投資サイクルには注意が必要です。
ハーモニック・ドライブ・システムズ(6324)
小型・軽量で高精度な動きに向く波動歯車装置を手掛け、ロボットの関節などに使われています。

TradingViewでハーモニック・ドライブ・システムズの最新チャートを見る
人型ロボットや小型ロボットの普及で注目されやすい企業ですが、会社側もフィジカルAI向けの本格的な需要拡大はもう少し先になる可能性を示しています。
期待が先に株価へ織り込まれやすく、受注や生産能力、実際の利益との距離を慎重に見ていきたい銘柄です。
THK(6481)
機械の直線運動を滑らかにするLMガイドを主力とし、アクチュエーターやロボット関連製品も展開しています。
AIが賢くなっても、機械が正確かつ滑らかに動かなければ実用化できません。THKは直線運動を支える部品に加えて、センシング、IoT、制御技術を組み合わせ、フィジカルAI分野での事業拡大を掲げています。
ロボット専業ではありませんが、様々な機械に使われる部品企業として恩恵を受ける可能性はあります。
キーエンス(6861)
工場の自動化に欠かせないセンサー、画像処理、測定機器などを手掛ける企業です。
ロボットが周囲を認識するには「目」に当たるセンサーやカメラが必要です。キーエンスはAI搭載画像センサーなども展開しており、製造現場の高齢化が進むほど提案機械が広がる可能性があります。
ただし、フィジカルAI専業ではなく、すでに高い成長期待が評価されやすい銘柄でもあります。テーマ性だけで株価水準を判断しないことが大切です。
コマツ(6301)
建設機械メーカーですが、フィジカルAIを「使う側」の候補として注目しています。
「スマートコントラクション」では、ドローンなどで取得した3次元データとICT建機、クラウドを組み合わせ、測量から施工、進捗管理までをつないでいます。
工場のように環境が整った場所だけでなく、日々状況が変わる建設現場で自動化を進めるには、認識・判断・動作を統合する技術が重要になります。建機の販売だけでなく、現場全体を支援するサービスへ広げられるかが注目です。
日立建機(6305)
日立建機も、鉱山や建設現場における自動化・データ活用を進める「使う側」の企業です。
ダンプトラックの自立走行システムや、稼働データをAIで解析するサービスを展開しています。2026年には鉱山向けのオープンな自動化ソリューションに向けた提携も発表しました。
現実の過酷な環境で蓄積される稼働データは、フィジカルAIの改善にも重要です。AIを搭載した機会を売るだけでなく、運用や保守まで含めた利益につなげられるかを見ていきたい企業になります。
3つのグループに分けて見てみよう
11社すべてを同じ「フィジカルAI株」として見ると、各社の違いが少しわかりにくいと思います。そこで3つのグループに分けてみました。
テーマの中心に近い企業
- ファナック
- 安川電機
- 川崎重工業
ロボットの普及台数が増えるほど注目される部品・センサー企業
- ナブテスコ
- ハーモニック・ドライブ・システムズ
- THK
- キーエンス
AI基盤や導入現場の広がりを見る企業
- ソフトバンクグループ
- ソフトバンク
- コマツ
- 日立建機
純粋にフィジカルAIとの近さを見るなら、最初はファナック、安川電機、川崎重工業を中心に確認し、次にナブテスコやハーモニック・ドライブ・システムズなどの部品企業を見るのが分かりやすそうです。
一方、ソフトバンクグループや川崎重工業のような複合的な企業は、フィジカルAI以外の材料による株価変動も大きくなります。
投資する前に注意したいこと

フィジカルAIは期待の大きなテーマですが、期待だけで投資するのは危険です。
特に次の点には注意しておきましょう。
期待と業績には時間差がある
ニュースや実証実験が増えても、量産や本格導入まで進まなければ利益には結びつきません。
「フィジカルAIに取り組んでいるか」だけでなく、受注、売上、利益、設備投資計画にどのように表れているかを確認する必要があります。
関連銘柄でも事業全体に占める割合は違う
キーエンス、川崎重工業、ソフトバンクグループなどは、フィジカルAI以外にも多くの事業や株価材料を持っています。
テーマに関連するという理由だけで、その会社の業績全体が大きく伸びるとは限りません。
株価へ期待が織り込まれている可能性がある
注目テーマは、実際の業績が伸びる前に株価が上昇がすることがあります。
長期的に期待できる企業であっても、短期間で株価が急騰した場面では、決算や移動平均線、出来高などを見ながら購入時期を分けるほうがよさそうです。
海外企業や中国メーカーとの競争がある
AI半導体や基盤モデルでは米国企業が強く、ロボット本体や部品では中国企業の成長も無視できません。
日本企業が技術力を持っていても、価格競争や開発速度で優位性を保てるかは継続して確認する必要があります。
フィジカルAIをさらに知りたい人へ
フィジカルAIが産業や日本企業に与える影響を、もう少し掘り下げて知りたい人には関連書籍もあります。※テーマに関連する参考書籍として紹介しています。
まとめ
動画を見るまでは、フィジカルAIという言葉を聞くと人型のロボットを思い浮かべていました(ドラえもんのようなロボット的な)。同じような人も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、工場のロボット、建設機械、物流、住宅、センサー、通信、精密部品まで含む、とても広い産業の変化だということが分かりました。
生成AIでは、半導体や基盤モデルを握る米国企業が市場をけん引しました。一方、フィジカルAIでは「AIをどう動かすか」「現場へどう実装するか」が重要になります。
その点で、産業用ロボット、精密部品、センサー。製造現場を持つ日本企業には、確かに活躍できる余地がありそうです。
個人的には、ファナック、安川電機、ナブテスコなんかを注目しています。。一年後に「ファナック買っておけばよかった」なんて言ってるかも。※あくまでも個人的意見です()
フィジカルAIが一時的な株式テーマで終わるのか、それとも日本のモノづくりを再評価する長期的な流れになるのか。これからも各社の決算や実証実験、その後の本格導入まで注目していきたいです。
ロボットが欠かせない産業、そして生活へ。
ではまた。
※本記事は、公開されている動画や各社の発表資料を参考に、筆者個人の考えをまとめたものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任でお願いいたします。
※企業の取り組みや計画は、2026年7月25日時点で確認できた情報をもとにしています。


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